今年、新しい年を迎えたばかりの1月19日。
Jacinda Ardernジャシンダ・アーダーン前NZ首相は、辞意を表明しました。
同月22日には、後任に
Chris Hipkins クリス・ヒプキンスNZ首相・NZ Labour 労働党党首に就任することが
決まりました。
そして1週間も経たずにサイクロン・ガブリエルが主にNZ北島を通過し、
多大な被害が出ました。
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先日4月5日、アーダーン前NZ首相は国会議員として最後の日を迎えました。
登院最終日の前日には、1月の辞任発表以来初めてのインタビューが放映されました。
インタビュアーは、私が人として熱くて好きな、John Champbell ジョン・キャンベル。
前首相とジャーナリストの対談というよりも、
私には心温かい二人のニュージーランド人の対話という感じでした。
私はボランティア活動でNZ Labour 労働党のメンバーをしているので、
数ヶ月前の全国党会議にも出席していました。
なので対談中にジャシンダが、その全国党会議の出席メンバーに力をもらったと言っていたからよかったです。
「憎しみを持たないで、異なる意見を持つ」ということにも触れていました。
こちらのインタビューでは、女性インタビュアーだったので
「働く母親」としての葛藤や思いについても語っていました。
政権としての功績として、
特に気候変動や公営住宅、子どもの貧困削減などの対策を誇りに思うと話していますし、
有給産休が26週間(さらに26週間の延長でき計最長52週間)取得できる権利を
設けたのですが、
「働きながら育児をするか、あるいは育児に専念するのか、それぞれの母親の希望で自由に選択できるようにしたい」というのが、
彼女の考えで(どこで言ってたかはもう忘れたけど)、私も強く賛同しています。
ちなみに、ジャシンダのスピーチは、英語の教材やテスト素材に使われていたりするので、
英語学び中の人は理解できるまで繰り返し聞いてみるといいと思います。
わかりやすいんじゃないかな。
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私がジャシンダに注目し始めたのは、NZ移住した頃で。
移住してすぐは、表向きに聞いてた話と違ってなんだか冷たい社会だと感じていました。
私達家族のNZ移住を最後まで反対していたのは、海外在住のNZ人の友人でした。
うんざりするほど保守的だから、と。
友人の言っていたことを痛感させるように、当時の国民党政権は裕福層優遇で、それに従順な羊のごとく従っていた多くの国民にもうんざりしていました。
何かおかしいと感じて国会討論を見るようになりました。
そこには、まだ若かったアーダーン議員が。
彼女の質問や追及の鋭さは、当時から際立っていました。
こういう聡明で人間らしい温かみあふれる人がいるのなら、NZに希望を持てるかもしれないと思えた中の一人でした。
こういう人が活躍できる社会が、未来に希望を持てると。
その後何年もしてから、彼女は当時世界最年少の女性首相に就任し、
その上、任期5年の在任中に出産し母親となって、
すでにある環境問題や国内外の山積した問題の上に、
白人至上主義者によるモスク銃撃事件、ホワイト島での火山噴火、
そして新型コロナウイルスのパンデミックやその後の景気後退など
過去の首相が経験しなかったような数々の厳しい危機が常にある中で、国を率いていました。
多くの人がメディアを通した報道やネット上やそれぞれの立場から見た意見を知って、自分の意見を持っていると思います。
私は、メディア報道がすべて信用できたり真実であるとは経験上思っていないので、
労働党のメンバーとして内部で多様の人々と交流し実際に感じたことから、
自分で見聞きし、判断し選択しています。
女性集会でのざっくばらんな意見交換とか、いいんですよねえ(編み物しながら参加してるベテランメンバー達もいたりして笑いにあふれてる)。
だから、メディアで伝わるよりも彼女の重責がとてつもなく大きいことも感じていました。
ジャシンダは、とても革新的な女性リーダーでした。
思いやりと共感力があって、慈悲深いリーダーであったことは
まぎれもない真実で、
国を率いることができることを証明しました。
インタビューを観ても彼女がとても楽観的なのが伝わると思いますが、
それは人の痛みに共感できる能力の高さだけではなく、
自身がインポスター症候群で苦しんだ経験があったりして、
強くて繊細な人だと感じています。
好意的な人、そうでない人など多様でいいと思うし、私も彼女の全ての意見に同意しているわけじゃないけど、それは夫婦間だって同じ。
でも反対しかしない人には、だったら自分ならどうやってより効果的に対処できるのか結果出せるのか、まず自答してほしい。
どんなに改善させたり成果を出しても、女性だからとか〇〇だからと認めたくないという枠に閉じ込めたい考えの人や、自分の不幸さを、憎む対象を見つけてぶつけることで生きがいにしているような極端な人もいます。
特に在任の最終年には、反政府、反ワクチン、極右団体からの嫌悪の標的となり、彼女とその家族に対する脅迫で何人もの男性が訴追されました。
これからも改善に10年20年かかるような問題もひっくるめて、
在任5年間で出来たこと、出来なかったことにフォーカスしたい人達が分析したり意見したりするでしょう。
意見交換や議論がしたいのなら、ネット上ではなくて(有効的に届かず書いて自己満足で終わる)、現場の人々や政治家などに直接会って建設的な意見交換することをお勧めします。
そうやって道半ばの課題は、続くリーダーと国民が取り組んでいく。
政治は、生活に密接に関係しているから。
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ジャシンダは、重責を抱えて世界的な危機の中よくNZを率いてくれました。
だけど、その重責に一生を捧げることも、理不尽な悪意を受け続ける必要はありません。
だから、年明けに辞意を発表した時、寂しかったけどほっとしました。
声が詰まりながらもやめることを伝え切った後に、労働党仲間の女性議員と抱き合った彼女の後ろ姿が、少女のようでした。 脱力 解放
あの姿を見て、ほっとしました。
本当に本当にありがとう。
もう自分の人生を生きてね、と思いました。
労働党メンバー仲間と話しても、ほとんどが彼女の選択を理解するという意見でした。
「政治家も、人間です。」
そんな当然のことを言い切らないといけないほど、社会はどこか麻痺している。
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今後は、クライストチャーチ・コールの特使と、
英国ウィリアム王子が主催するアースショット賞の評議員会に参加するとのこと。
クライストチャーチ・コールは、モスク銃撃事件以降、オンライン上のテロリストや暴力的過激派コンテンツの排除のために、120国以上の政府、オンラインサービスプロバイダー企業、市民社会団体が協力して活動するコミュニティなのだそうです。
アースショット賞は、環境問題の解決に貢献した作品に毎年100万ポンドの賞金を授与することで、革新性・楽観性を奨励し広めていくものなのだそうです。
どちらも彼女らしい選択だなと思いました。
インタビューでもあるように、ジャシンダが首相になって、
国内外とてもポジティブなコミュニケーションが起きていたし、
特に子供世代、私の周辺の若い世代でも保守的な親世代に反して、
選挙での投票や社会を良くしていくためのディスカッションに積極的です。
それも彼女の残した大きな功績の一つであり、
移住してすぐ彼女の可能性に気づき、長年支持してきて良かったと思います。
これから将来ますます
AI などのテクノロジーが、生活に密接になっていく社会になっていきます。
「思いやりと共感力があって、慈悲深いリーダー」の、
強くて温かみのある人間らしさが、重要性が、今よりももっと評価されていくでしょう。
私からは、ただただ、ありがとうの感謝を込めて。