Bittersweet in NZ

こんにちは、ウトです。家族とNZで暮らしています。移住して10年近くは、多くの怒りやフラストレーションを感じていましたが、おかげで行動・経験・学びができて、最近はおだやかな日々がとても増えています。いろんな変化の流れが強いので、大切なのは何か?ということにも向き合っていたい。ここには、体験や感じたことを言葉にしておきたくなった時に綴っています。 Thanks for being here.

犬と生きていくということ。

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ロックダウン中の、静かな海でした。
ペットロスで落ち込んでいる知人に、5ヶ月過ごした自身の愛犬を
里子として出した行為に、多くの批判を受けているというGACKTさんのニュースを目にした。
 
5ヶ月過ごしたのに、手放せるものなんだな。
手放せる人なんだな ...と思って。

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おいしいコンブあるかな?
ちょっと前も、アメリカで、交通事故後に行方不明になってた愛犬が見つかって、
号泣している飼い主さんのニュース動画を見ていた。
 
朝からオイオイもらい泣きする私を心配して
じっと見つめて、そばに来て、寄り添ってくれるウチの犬くん。
 

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人、少なかったね。

犬くんのお父さんとお母さんは、牧場で働くワーキングドッグだからか
彼も毎日外を歩くのが大好きな、中型と大型の間くらいのミックス犬。
国際結婚で混血のわが家に、ぴったりふさわしい犬だ。
 
散歩は、毎日たいてい2時間近くかけて。たいてい私が一緒に行く。
今ロックダウン中だけど、今までと変わらず、人も犬も健康維持のために散歩していい。
散歩道は決まってなくて、新しい脇道を見つけるのが大好きな彼の、行きたいところを歩く。
キミの行きたいところに、一緒に行こうね。
毎日同じだったら私のほうが飽きてしまうから、ちょうどいい。

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まだ?
噛まれた首の深い傷は、たるんだ皮膚のおかげで命を落とさずにすんだ。
だけどそれから、人間で言うところの関節リウマチのような、
自己免疫性関節炎を発症してしまって
炎症と痛みをコントロールしながら、ステロイドによる体重急増にも苦労した。
 
関節のためには体重増加を抑えないといけないのに
炎症と痛みを強く抑えるステロイドの副反応が、強く出てしまう体質のようで。
それが数年かけてコントロールできるようになって、やっとステロイドを止めることができたのに、今度は後ろ右脚の筋肉が激減していた。
薄くなってダンボールのようだった。
 
このままだと脚切断しないといけないかもしれないから覚悟しておいて、と
獣医に告げられた。
 
この時、まだ若い4歳のころだった。
彼が襲われた時よりも、私はもっと深い深い谷に突き落とされた。
 
右後脚の膝にずっと痛みがあったらしい。
でも病気や痛みを表に出さない犬というのは多いらしくて、
うちの犬くんも我慢してしまうほう。
 
自分が痛かったり動けないでいるせいで、
家族が暗くなってしまうのを、わかってしまう犬なのだ。
 
私たちが、努めて明るく振る舞っても、それでも半分ボーダーコリーの彼にはばれてしまう。
それで、地面に右後ろ脚をつけていても体重をかけない術を身につけていた。
人間に気づかぬように。
「わーい散歩うれしいなー!」という喜びようで、
楽しく散歩したり遊んで毎日を過ごせるようになってきた。
 
体重をかけてない右後ろ脚にも、筋肉が急激に減少していることにも
ボーダーコリーの血が流れていない私たち家族には、気がつかなかった。
 
筋肉というのは、短期間であっという間に減るらしい。
突然右後ろ脚を使わなくなってしまって、やっと気づいて、
大慌てで獣医さんのとこに駆けつけた。
 
それから、痛みがあっても隠す彼の痛みをコントロールしながら、
筋肉をつけるための毎日が始まった。
筋肉が戻らなければ、切断しないといけない。診察のたびに言われていた。
 
3本の脚でも、幸せな犬はたくさんいるのだけれど
元々自己免疫性関節炎があるから、
これからの犬人生を、3本の脚に負担を余計にかけていくのは
できれば避けたい。獣医さんも私も同意見だった。
 
「一年半はかかるかもしれない。8割戻ればいいと思って。完全に元に戻そうと思わないで。完全に元に戻ることよりも、彼が幸せでいることが一番大切だから。」
子犬の頃からずっと診てくれている獣医さんが言う。
 
それから彼の右後ろ脚の筋肉をつけることが、私の大事な日々の使命の一つになった。
子供たちは、しっかり彼が四肢を使ってなくても可哀想でどうしても甘やかしてしまう。
 
切断させてたまるか。
 
そうやって毎日のトレーニングと運動と、獣医さんのおかげで
6歳になった彼の右後ろ脚は、切断しないですんでいる。
 
減少した筋肉はだいぶついてきたけど、もう少しつけるためと
関節の可動域のキープするためにも、ほとんど毎日散歩に行く。
筋肉は気を抜いて使わなければ、また落ちてしまうから。
行けないのは、暴風雨の時ぐらい。
 
彼は、ニュージーランドに住んでいるというのに、風と波が怖い。
今日も大丈夫よ〜って励ましてるのに、波のそばに行くもんか!と踏んばってた。
 
だけど、いつか一緒に抱っこして(26キロ)でもいいから、
そ〜っとお風呂のように海に入るのが、私の小さな夢。
 
犬を飼うのは彼が初めてな私は、実際飼うまでは
よく巷で言われている「犬(ペット)は大事な家族」というフレーズに、
本当なのかな?と楽しみに思っていた。
 
むちゃくちゃ本当だった。
 
小さい頃、大きな犬に追いかけられて以来ずっと動物恐怖症だった息子は
犬くんが来てからというもの、すっかりよその大きな犬でも仲良くなるくらいに、
犬に好かれる人間になった。
 
子供たちは学校から帰ってくると家には入らずに、気づくと
庭でしばらく一緒に座って過ごしていたりすることもあった。
 
私の手が犬くんの近くにあると「なでてなでて!」と顔や鼻先をすり寄せてくる。
お母さんの2つの手は、けっこう忙しい。犬なで用の手がもう一つあったらいいのに。
なでてない時は邪魔かな?
でも私かなり順応性が高いから、慣れるかもしれない。
 
私が日本語を話す相手が、彼しかいない日々がほとんどだ。
子犬教室で、言語は一つにしてね、と言われたのは遠い日のこと。ちっとも守れてない。
「ちょっと待ってね」「汚い汚い(その水は)」「シャワーね(足汚いから)」
そして黄金ワードの「さんぽ(毎日大喜び)」
二か国語ともわかってるみたいだし、なんだか大丈夫そうだ。
 
私の「リビングにデイベッドを置こうプロジェクト」は
家族を納得させるまで、数年かかった。
 
クレイジーだと言われ続けながら(特に夫から)、
説得の末に(+半ば強行で)お古の子供用ベットのUPサイクルで置いたら
案の定、家族みんながもっと気軽に犬とゴロゴロ戯れるようになった。特に夫。
ほ〜ら、だから言ったじゃん。
気持ちいいに決まってるんだから、もっと早くからやってればよかったのに。
犬を飼うのは健康にいいらしいけど、そりゃそうだ。
人と犬が楽にゴロゴロするには、床から高さが必要だったのです。
 
 
温かい犬の背中を抱いて、その毛だらけに顔を埋めて、
犬の香ばしい匂いに包まれて、まどろむ心地良さ。
 
犬の「匂い」は、決して「臭い」ではなくて、香ばしい「香り」に近い。
この犬にしか出せない精神安定剤的匂いを、
わざわざ作り物の人造香料で台無しにする製品があるらしい。
「ラブリースメルなんだから、そんなものいらない」と
子犬教室の動物看護師さんも言っていた。そこの動物病院で、ソレは売ってはいたけど。
おっしゃる通りだ。
 
それにしてもこれだけ毎日よくもまあ毛が抜けるね。忙しないね。
私は何年も黒い服を着ていない。
 
SNSでは、いろんな人がペットのベストモーメントを撮れててすごいな。
なでなでの連続と抱っこと連続ボール投げと長散歩しながら。
あ、あと、自動連続ボール投げマシーンがあったらいいのに。
 
パンデミックになって、犬を飼う人が増えたらしい。
でも毎日一緒に散歩するというような、コミットメントはいると思う。
毎日長時間一人でお留守番させる人もいるみたいだけど、
うちの犬を見ていると、1日の中で家族の一員としてのやりとりを
ものすごく求めているのがよくわかるので
私たちには、それはとてもできない。
 
顔あげていちいち、目力とのどで伝えてくる。 
「ママー、郵便配達のヤロウ通ったー」「はいはい」
「ママー、知らない犬通ったー」「はいはい。みんなの道だからいいのよ」
 
ずっと独りだと、彼には
「はいはい、いいのいいの、だいじょぶだいじょぶ」の合いの手が入らない。
 

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ここらへんに生えてる葉っぱがおいしいんだよね。
 
***
 
里子に出された、ワンちゃん。
 
たぶん新しい飼い主さんが、GACKTさんよりももっとたくさん愛情注いでくれる人たちなら、
ワンちゃんは大丈夫な感じがする。
 
でも、自分の愛犬でなくても
飼い主がいなければ殺傷処分になってしまうような、
救える命ギリギリの犬を、選ぶ選択肢はなかったのかな?
そういう命、いっぱいあるよね。日本にもどこの国にも。
 
彼のファンでもなんでもなく、印象は至ってニュートラルだったのだけど
今回の行動を知って、なんか残念に思いました。ゼロからマイナスに。
 
 
彼の「愛犬」っていうけど、本当に彼に愛はあったのかな?
彼の音楽には、愛の歌がありそうだけど。愛を奏でてる人だと思ってたけど。
 
 
うちの犬くんも「愛犬」なんだけどな。私たちには絶対できない選択だよな。
 
 
 
MelvinsのBuzzは、愛犬家。素晴らしい。大好きだ。
Dog Island - Melvins