Sparkling* 光ってるのどうする?

こんにちは、ウトです。こちらは 以前のBittersweet in NZ の続きです。主に、NZ暮らしでの体験や思いを言葉にして発したくなると綴る私感ブログです。

クライストチャーチ銃乱射事件、その後。

 

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<連帯して、立ち上がる。>
 
テロリストで
犯罪者であり
過激主義者で
卑怯者のオーストラリア人の銃で、50人が死亡し大勢が負傷した
NZクライストチャーチの銃乱射事件。
 
 
襲撃犯の名は口にしないという
ジャシンダ・アーダーン首相の率いる、NZ労働党の多文化メンバーで
多民族移民の抱える問題にさらに向き合うために
ノースショア支部設立メンバーになることを引き受けていた私と夫。
 
多くの人々同様、この銃撃事件にとてもショックを受け
心がまだ重いのを、感じて日々を過ごしています。
 
ジャシンダの行動や言葉、遺族や被害者、一つになって祈りを捧げる国民に対し
多くの好意的意見が世界中からありましたが、
 
自分がマイノリティな移民でもなければ、
抱える問題の解決のために活動もせず
見聞きしたことだけで勝手に想像して、
嫌悪感や無理解を振りまく人たちもいました。
 
事件のあった2019年3月15日から
一週間経った、金曜日。
 
この日は、遺族らやムスリムへの敬意を表すために
「Headscarf for Harmony(調和のためのスカーフ)」を身につけよう、という
呼びかけが国内であったので、私もここオークランドで
一日中外出の時に、イスラム教徒の女性が髪を覆うスカーフ
「ヒジャブ」をつけていました。
イスラム教のすべてに賛成ではないけれど、それとこれとは違います。
 
 
 <Jummah Remembrance: Vigil for lives taken in Christchurch>
 
同日の夜6時からは、CBDにあるオークランド・ドメインで
「クライストチャーチで奪われた命の追悼礼拝」が行われ、
何千人もの人が訪れ、私たち夫婦も参加しました。
 
この礼拝を主催した団体です。
Migrants Against Racism and Xenophobia (MARX)
Racial Equity Aotearoa
Shakti NZ
Asians Supporting Tino Rangatiratanga 
Auckland Peace Action
 
式典では、ムスリム団体や差別主義に反対する団体のリーダー達が、
次々とスピーチをしました。
若い演説者には、難民としてNZで育ち団体リーダーになった
10代後半から20代前半の人達も。
 
演説では、直面してしている日常的な人種差別と暴力や
NZの白人入植者の歴史、植民地支配に言及しました。
 
2時間ほど行われたのですが、途中から退場した参加者もいました。
 
<礼拝か?政治集会か?両方か?>
 
 
式典中、何人もの演説を聞いていましたが
確かに、居心地は悪かった。
 
イスラム教徒に対してだけではなく、
マオリ、パシフィカ、アジアその他の移民コミュニティに対する
白人至上主義への強い非難と抗議は、植民地時代にも及んで続き
犠牲者の追悼のために来ている白人は、そうとう居心地悪かったはず。
白人至上主義に大反対の白人の夫も、多少我慢して聞いていました。
 
ぞろぞろと早く退場した人達は、
「犠牲者の追悼だけをしたかった。」
「植民地時代の白人の仕打ちへの非難が多すぎた。」
 
「犠牲者の追悼式に、人種差別・植民地主義・白人至上主義の議論を叫ぶには、
早すぎる。」と。
 

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グリーン党党首マラマ・デビッドソンと話していたちょうどこの時、クライストチャーチでモスク銃撃事件が起きていた。


そして一週間前、私たちが

たまたま事件の起きていた時間に会話をしていた
グリーン党の共同リーダーでマオリの、マラマ・デビッドソンも演説をしました。
 
「人種差別は日常的に起きていて、すでに人々は亡くなっています
人種差別について議論するのは『早すぎる』のではなく『遅すぎる』のです。」
 
「心から亡くなった方々に敬意を表したいのであれば、
『この事件は、襲撃犯だけではなく日常の人種差別の存在を意味している。』という、ムスリム・マオリ・パシフィカ・その他移民のコミュニティ全てに耳を傾けるべきです。」
 
「多くの人には、これが『不快な、受け入れがたい真実』であることを
理解しています。」
 
 
この礼拝の最後まで残った、パケハ(白人)の参加者からは。
「これは、マイノリティ、移民、マオリ、NZの有色の人々が直面している現実であり、白人は黙って、人種差別の影響を直接受ける人々の声を聞くべきだ。」
 

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この日の礼拝式典中、時折違和感を感じたのは、
襲撃犯が白人至上主義者だったために、
 
白人 VS 有色人種を、強く出しすぎていたこと。
 
そして白人至上主義に焦点を絞りすぎて、
昔の植民地時代の原住民に対する迫害と
他国からやって来た移民難民が受ける嫌悪は
一緒くたにされて
 
イスラム教徒に対する嫌悪の訴えが
薄まっちゃった感じがしたことでした。
 
え?それを持ち出すの?ここで?っていう。
横入りされて、ちょっと占領された感じ。
 
今回の事件は、
白人至上主義とイスラム教嫌悪(islamophobia)だけでなく
外国人嫌悪(xenophobia)、人種差別、移民排斥主義が原因だと
どの移民コミュニティでも言っています。
 
だって、NZの現実はどうですか?
 
人種差別あるじゃないですか。
 
白人 VS 有色人種だけじゃないですよね。 
 
差別感情の発生元は、白人だけじゃない。
 
マオリとアジア人移民間の差別
アジア移民同士でも差別
白人とマオリの間、
白人と移民の間の差別。
 
マシェティで、アジア人を襲うのはどういう人たちですか?
 
日本でだって「イスラム教徒はいいけど、〇〇人は嫌い。」とか。
 
どこにでもあるんですよね。
 〇〇人優位主義や〇〇人嫌悪が。
 
50人もの命を失って、多くの犠牲者も出なければ
日常的な人種差別があるNZの現実は、表に出ることはなかったのだろうか?
 
襲撃される可能性の低い、白人や白人移民は聞く耳を持たなかったのだろうか?
50人も、死ぬ必要あった?
 
結局は、〇〇人優位主義が問題で
差別はいろんな発生元があって、いろんな方向で差別行為が行われていることを
明らかにして対応しなければ、いつまでたっても
こういう悲しい事件は無くならない。
 
移民の方も「ギブミー」一辺倒じゃなく
「ギブアンドテイク」ができていなければ、
差別感情を生んでしまうことになる。
 
恩恵を受けているだけで、何もしなければ
与えるだけ(取られているだけ)の側に不満がたまっていくのは、当然のこと。
 
国内国外で、追悼式があったけれど
しばらくしてまた、これまでと同じ生活に戻ったら
何も変わらず、多くの犠牲が無駄になってしまう。
 
とりあえず、悲しそうなフリはするけど
これまでと変わらない白人や白人移民も多いでしょう。
 マイノリティのことなんか考えず。
 
差別を受けても、我慢し続けて
差別があるのを知りながら、見ないふりして
「楽しい海外移住生活」ができてるようなふりして、暮らし続ける。
そういう移民も、たくさんいる。
 
命を落とす心配がないから、そうするのかもしれないけれど
差別感情の放置で、命を落とす誰かはどこかにいる。
今回のモスクで祈っていた人々のように。
 
あなたが感じる、NZの居心地の良さは
誰かがどこかで、長年努力したおかげかもしれない。
それを、さも与えられて当然という風に、満喫しているだけだとしたら
ジャイアニズムをしているつもりはなくても
他人はそう感じてしまうこともある。
 
「おまえのものは、おれのもの。おれのものも、おれのもの。」
 
差別感情は、白人から向けられるものとは限らないのだから。
 
 
礼拝式典の最後まで参加した私たち。
 
最後に、ロウソクに火を灯して
それぞれが祈りを捧げるのですが
 
急いで家を出てきたのでロウソクを忘れてしまい
立ちつくしていると、すぐに
 
「あまっているから、どうぞ。」と
おねえさんが、ロウソクを分けてくれた。
 
ロウソクの火は…..あ、もらい火だ。
 
人からもらわないといけないけど、すぐにまた
別のおねえさんが、
「火、あげますよ。」と、分けてくれた。
 
アジア人でスカーフを頭にかぶっていたからなのか
もらった優しい親切が、うれしかった。
 
自然に誰かが、ニュージーランド国歌を歌い始めて
その場にいた人々が、
一つになって声を合わせ、歌った。
 
ハカをして見送る、たくましいお兄さんたちも。
 
それぞれの形で、
亡くなった50人の人々と犠牲者たちに、祈りを捧げた。
 

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<民族間の和解ファンタジー:Racial Reconciliation Fantasies>
 
ニューヨーク・タイムスで、ウェズレー・モリスという黒人の批評家が
映画「グリーンブック」のアカデミー作品賞受賞について
 
彼はアメリカのことを語ったのだけど、
これはどこの国にも多かれ少なかれ当てはまっていて
 
平和で安全そうに思われていたニュージランドで
多くの難民を含めたイスラム教徒が、襲撃されたことは
民族間の調和が「リアリティ」ではなく
「ファンタジー」だったことを、突きつけました。
 
犠牲者を悲しんで、またこれまでの生活を
これまでと変わらず続けていけば
「調和ファンタジー」に戻っていくだけ。
 
子供を虐待から守るためには、
国の法整備だけではなく
自治体・学校・地域の親や大人たち・学校の子供たちまで
ありとあらゆる方向から、あらゆる手段を使って守ることが必要なのと同じように
 
差別問題に対しても、それぞれができることをできるだけ
多方面で対応を続ける必要があると思っています。
 
自分が、NZ労働党の多文化メンバーになったのも
移民の抱える現実的な問題を、移民間での差別も含めて
明らかにして、できることを取り組んでいきたいから。
 
多文化メンバーとして、ノースショア支部の設立メンバーになったのも
意見や提案を、政府執行部に直接提案できて検討してもらえるから。
私達だと、特に移民労働大臣との関わりが多くなるでしょう
 
自分の勝手で、国際結婚をして
「子供には、二つの文化があるから、日本とイギリスで育てるべきだ。」と
大好きでいい環境だった日本を離れ、育児治安の悪いイギリスを避けて
永住権が取れたからたまたまやってきた、ニュージーランド。
 
このニュージーランドの安全と未来のために
政治活動に関わって、少しでも生活環境がよくなるよう活動していくのは
 
子供たちへの責任と、愛情表現であり
母としての、愛情の証。
 
もう、みんな大きくて抱っこはできないから
お母さんなりに、できる形でやっていきます。
 
それは、おいしくて体にいいごはんを作り続けるのと
まったく同じこと。
 
思いやりを家の中だけに向けているのでは足りないから
外にもよその子にも、見知らぬ誰かにも向けているだけで。
 
私は、NZLabour党の多文化メンバーになることを選んだけれど
移民であってもなくても、それぞれが
何かできることを見つけて、やってほしいです。
 
娘のムスリムの友達、 Zちゃんは、
以前「頭に着けるヒジャブをつけ続けるか、やめるか。」という選択を
親から求められたそう。
 
でもZちゃんは「つけなくてもいいほうを、選んでもいい」と
いうことを知らなかったので
「つけ続けるほう」を選んだ。
 
つけなくてもいいほうを、選んでもいいことは
後で親に言われたそう。
 
でも、もう決まったことだから
Zちゃんは、ヒジャブをつけ続けなければならないそう。
 
クライストチャーチの銃乱射事件の後、
週末明けのここオークランドでは、
バスで若いムスリム女性が罵倒され、
イギリスでも大馬鹿者に、ムスリムが襲われるという事件があった。
 
あの事件の時、モスクにいたのは難民g多かった。
 
礼拝式典で、何人ものムスリム女性が
「ニュージーランドにいて安全だと思っていた私達は
あの事件以降、生活は一変してしまった。」と叫んでいた。
 
Zちゃんに、ヒジャブ選択をていねいに説明しなかった
ご両親もひどすぎるのだけど、
ちゃんと知らずに、つけることを選んだZちゃんは
これから何度も不安になることでしょう。
 
自分も標的の対象になるのだ、ということに。
 
それを思うと、いたたまれない。
 
 
<銃規制の厳格化>
 
銃乱射事件後、18日にアーダーン首相が銃規制の厳格化を発表しました。
 
とても残念だけれど、50人の失った尊い命がなければ
これまで銃規制厳格化に反対だった
連立政党のNZファースト党や国民党に、賛成させることができませんでした。
 
オーストラリアの安全対策専門家が、
 
でも、NZでも銃規制強化のチャンスは、2017年にありました。
 
 
2017年当時は、国民(National)党政権で、
当時警察大臣で、現在もNational党副党首のポーラ・ベネットが
 
当時のNZ警察協会会長は、このポーラ・ベネットの判断に
 
この時は、2017年総選挙前。
ポーラ・ベネットは銃規制の国会討論中にも
執拗に銃推進派のロビー圧力団体から圧力を受けていて
NZ銃所持団体(COLFO)・全米ライフル協会(NRA)から
242,000票を盾に圧力をかけられていたというメールが、明るみに。
 
「最大政党である」と2017年選挙時に、大きな顔をしていたのです。
(議席過半数を超えなければ、最大政党であっても
政権は取れないのがNZ選挙なのですが。)
 
 
逆に今回、NZ Labour党のアーダーン首相は
銃規制厳格化に影響されないと断言しています。
 
この厳格化は、
元警察大臣の銃圧力団体に従った判断を非難し反対してきた
警察協会と警官ユニオンにも、強く支持されています。
 
 
1996年、オーストラリアでは
タスマニアで35人が銃で殺害された後、銃規制が厳格化されました。
 
ONE NATIONという右翼政党が、海外の全米ライフル協会から
寄付金を要求しているという
オーストラリア首相は、海外からの銃推進派圧力団体の干渉を非難しました。
 
銃規制が厳格化しても、ロビー団体の圧力は執拗です。
アルジャジーラ、がんばれ!!!
 
 
 
<ちょっと、意外だった記事> 

www.dailymail.co.uk

「Psychological Science」で発表された
イギリスの15000人の幼年期の知性と
成人期の政治的見解を比較研究した
 
>>>
右派の人は、左派より知的に劣り
幼年期の知能が低いと、成長すると
人種差別主義者や反同性愛者になる傾向があるそう。
 
保守的な政治は他人に対する偏見への「入り口」になる。
 
知性の低い人は、安全な気分になるため、右翼の考えを重視している。
 
人種差別主義者かを決定するのは教育レベルではなく、生まれ持った知性。
 
認知能力は、他の人々の印象を形成し、心をオープンにするのに重要で
認知能力が低い人は、現状を維持する
より社会的に保守的な右翼のイデオロギーに引き寄せられる可能性がある。
 
でも、社会的に保守的な人々すべてが偏見を持つわけではなく、
偏見のある人々すべてが、保守的であるわけではない。<<<
 
 
だそうです。
なんでちょっと意外だったか、というと。
 
このカナダの研究論文を紹介したのは、デイリーメール。
デイリーメールは、右だけどな〜
自分のとこの読者に向けてるのかな〜?
 
まあ、多様性の中にいるから
常日頃あれこれ考えてはいるなぁ、と自分では思うけど。
 
 
<Love Aotearoa Hate Racism>
 

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金曜日の追悼礼拝の後、日曜日。
 
オークランドのアオテア・スクエアでは
人種差別に反対する集会が開かれました。
 
第二次世界大戦で、ニュージーランド軍に従事した退役軍人の
 
 
人種差別をなくそうと
警官と男性の手を借りて共に行進する、佐藤さんの姿がすばらしいですよね。
 
スコットランド人の母と日本人の父を持つ佐藤さんは
4台ものバスを乗り継いで、アオテア・スクエアへ。
 
佐藤さんもまた、クライストチャーチの事件を聞いて
夜も寝られないほど、とても悲しんだそうです。
 
戦争を経験したご自身の人生は、困難の連続だったので
人々は文化的民族的背景に関係なく、お互いに気を配ることが大切だ、とも。
 
参加中も人々は親切で、警官が手を貸してくれて
帰りは自宅まで送ってくれたそうです。
 
「私たちはみんな、
避けようもない過酷な試練を、くぐり抜けます。
起こったさまざまな出来事によって、
もっとより理解できるようになることを
私は願っています。」
 
人種差別に反対する
95歳のジョン・佐藤さんは語りました。
 
このニュースが流れると、海外から多くの反響があり
佐藤さんは一躍、時の人に。
 

www.radionz.co.nz

 「自分はヒーローでなく、
自分のできることをしただけ。」
人種差別反対集会に参加した、佐藤さんの思いと行動が
海外でも多くの人々に感動を与えたそうです。
 
「人生で学んだ一番大切なことは、
愛であり、まだ今も学んでいる。」のだそう。
 
 
 
「調和ファンタジー」に、陥ることがないように。
 
意識を変える心、勇気を出す心、行動する心は
 
知性がどうであれ
 
みんなそれぞれ持って、生まれてきているはず。
 
その心意気で毎日を
 
生きているのか、どうか、
 
できることをやっているか? というだけ。