Bittersweet in NZ

こんにちは、ウトです。家族とNZで暮らしています。移住して10年近くは、多くの怒りやフラストレーションを感じていましたが、おかげで行動・経験・学びができて、最近はおだやかな日々がとても増えています。いろんな変化の流れが強いので、大切なのは何か?ということにも向き合っていたい。ここには、体験や感じたことを言葉にしておきたくなった時に綴っています。 Thanks for being here.

世界母乳育児週間

8月1日から7日までは、「世界母乳育児週間」なんだそうです。
 
 
ユニセフによると
5人に3人は、生後1時間以内に母乳が与えられていないのだそうです。
 
ママと赤ちゃんたちの母乳育児の環境は
あたたかいとは言えないので
いろんな国で、もっとサポートが必要ですよね。
 
例えば。
お母さんが外出先で、
乳房を隠して授乳しているのに
あたかも汚い行為であるかのように
苦言を放つ人たちがいることは、残念です。
 
小さな赤ちゃんは、犬じゃないので我慢できません。
 
私も一時期そうだったように、授乳が1、2時間おきの場合もあるんです。
 
外で授乳やめろというのは
次世代の「小さな人間の栄養摂取を阻止」する行為ですよね。
 
授乳という自然な行為に寛容になれず
当たり前のことと受け取れなくて
 
母子に不要なストレスを与える人たちは
 
自分より若い次世代の助けを、
生きていく間ずっと必要としない覚悟がある人たち、なんでしょうね。
死ぬまでずっと。
 
 
***
 
前回、授乳中のIELTSテスト体験を思い出して
自分で絞ってもあんまり出ない「さし乳」なので、
テスト内容より長時間授乳できないことの方が心配だった、ことを書きました。
 
「さし乳」ってもしかしたら、
通っていた桶谷式母乳育児相談室、https://oppa.oketani.or.jp
だけで使う通称かな?
 
と思って調べてみたら
ちゃんと普通に使われてました。
今では「差し乳」「溜まり乳」漢字なんだなあ。
 
 
「差し乳」は普段は空っぽで、
授乳を始めてから母乳が作られるなんていう話があるそうで、
ビックリしました。
 
授乳したら、母乳の分泌を促進するってことかな。
促進だから停止ってわけじゃないと思うんだけど。
1人目より3人目の方が、張りは少なくなったけど
お乳はやわらかくても、出てたけどな。
 

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つみ重ね。
 
子供3人。1人に3年間、合計9年間。
卒乳後の後しぼりまで入れると、
10年ほど桶谷式母乳育児の相談室に通ってお世話になりました。
 
およそ20年前から10年前まで、
相談室で出会うママさん仲間と「さし乳」「たまり乳」という話題はよくあったし
助産師さんたちからも、「差し乳」は普段は空っぽなんて
聞いたことありません。
 
自分の感覚と、ママさん仲間から聞いたのは。
 
さし乳:搾乳してもほとんど出ない。
たまり乳:赤ちゃんが飲む以上のお乳を作ってしまうので、さし乳ママ以上に食事に気をつけないといけない。もらった大福食べたい〜って嘆いてた友達を思い出しました。
 
 
*桶谷式母乳育児って?*
 
”桶谷式母乳育児とは助産婦・桶谷そとみ(1913-2004)が考案した
乳房マッサージと母乳育児方法で正式には「桶谷式乳房管理法」と言います。”
(ホームページよりhttps://oppa.oketani.or.jp/what_is_oketani_shiki )
 
私の通っていた相談室は、東京都内にあって
桶谷式を習得するための研修センターでもありました。
 
広いフロアにベットが4つ。
乳房マッサージ(手技と言います)を指導する助産師が4人と
全国から手技を身につけるために助産師さんが多くいて
 
ママさんたちも、なごやかにフロアで赤ちゃんたちを遊ばせながら
授乳したりおしゃべりしたり、もちろん助産師さんたちも。
すごくのんびり楽しい場所で
よくお弁当を持っていって、何時間も過ごしていました。
 
私は、母乳の出が悪いのと乳腺炎で通い始めたけど
相談室には、東京近辺からだけじゃなく
全国から、アレルギーや障害のある子、医者に見放されて来たお母さんなど
私よりも、もっと大変な母子たちが集まっていました。
 
アレルギーでママの食事制限が、すごく厳しいのに
「この子のためだから、平気だよ(笑)」と
明るく順応していたママ仲間たち。
自分たちのできることを、
ブレずに、とにかくやり通すということを、教わりました。
 
育児人生の中で、すごく大切で密な人たちと場所。
ありがたくて宝のような経験でした。
 
*****
 
長男を産んだ20年以上前の話。
 
産むまでは、粉ミルクでも母乳でもどっちでもよかったのに
いざ産んでみたら突然、本能的になって
野生のサルの母親にでもなったかのように、
母乳で育てたいと強く思うようになりました。
 
あの頃は、テレビの育児番組でも
産婦人科の「母乳もあげたことのない」老いた男の先生が
「母乳は、生後6ヶ月でやめましょう。」
 
母乳もあげたことのないのに、なんでわかるの?
母親には、感情があるのに。
機械じゃない。
 
検診でも生後6ヶ月を過ぎると、
「もうそろそろやめたら?」
「母乳育児は、宗教じゃないんだから」
 
などど、私の本能的な欲求を無視した専門家たちに
さんざん言われながら、迷いながら
1人目の育児をしていました。
 

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そんな中、長男7ヶ月の頃
ずっとスッキリしないお乳にモヤモヤする毎日の中で、
本屋で「桶谷そとみの新・母乳育児の本」を手にしました。
 
もう何度も何度も、カバーもなくして小汚くなるまで
読み返しました。
 
そのうち、左脇に赤く腫れが。
 
痛みに耐えきれず、
母乳で育てたいのに、否定ばかりする専門家たちの言葉を振り切って
やっと相談室に予約の電話を入れたのでした。
 
***
 
いざ相談室へ行ってみたら、
もう和気あいあいで、ホンワカ楽園のよう!
 
ベットに横になって、この痛みから解放されるんだ!と思うと
ウジウジ悩んでたのが、バカバカしくて
もっと早く来ればよかったと後悔しました。
 
左脇の赤い腫れは、もうかなり痛くなってて
脇からアゴの下の首筋まで、ズシーンと重くなっていました。
 
温タオルを乳房にのせて血行を良くしてから
助産師の先生が、手技を始めます。
私には、教員として指導するレベルの
ベテラン先生がついてくれました。
 
手技は、ちっとも痛くないので、寝ちゃいそうですが(寝たこともありました)
先生と楽しくお話ししながら、
自分では絞ってもあんなに出なかったのに
先生だとクジラの潮吹きみたいにピューピューと。
口元に飛んできたお乳は、冷たくてしょっぱくてまずかった。
 
固まりが詰まっていた乳腺を、きれいにしてくれて
粉チーズの一粒みたいな固まりも見せてくれました。
お前が原因だな!!!憎たらしい。
いや、もうホントに憎たらしいの。
タオルについた、溜まっていた母乳は、黄色くなってて臭かった。
 
毎日あげるんだから、味見したらいいよと言われて
母乳は、よく味見してました。
 
手技を受けるようになってから、
長男は、おいしい母乳しか飲まなくなりました。
 
まずいと
赤ちゃんなのに、天井眺めて知らん顔。
絶対に口にしない。
 
次男と末娘には、まずくても絞り出せないので
「お願い飲んで〜」というと
頭ポリポリかきながら、しょうがないなぁ〜って感じで飲んでくれました。
 
面白いのは、こういう赤ちゃんの時の性格が
10年20年経っても、おんなじなんですよね。 
 
だから、どんなものを食べると
ほんのり甘みがあってさっぱりしたおいしい母乳になるか
油っこくなったり甘ったるくなるかていうのも、
自分でわかるんですね。
 
海外では、フライドポテトを食べ続けても
トラブルのないお乳が出るママさんもいるそう。
 
要は「ママの消化力」によるんだそうです。
 
ストレスや、季節や、忙しさ
体が疲れすぎてることも関係するし。
環境もそうでしょう。
 
だから今、母乳をあげてて
まだ味見したことないママは、やってみて。
 
自分の体に向き合って
赤ちゃんとのリズムを取りながら
「自分の体はこういう風に働くんだ。」っていう
調子をつかむといいですよ。
 
お乳の調子がいいと、
子供が飲んでる時に、アゴの下・首筋・胸の奥までが
血管バクバクするくらいの感じで、流れが良くって
ものすごいスッキリするんですよ。
 
桶谷式では
体と乳房の調子がいい・悪い時をしっかり教えてもらったので
自分でもいい調子に持っていきたくなる。
そのほうが、自分も子供も調子いいから。
 
「1年間は、とにかく続けてみて。母子のリズムが合うようになると
母乳育児が楽しくなるから。」って励まされ続けて。
 
本当に、母子のリズムが合ってくると
栄養面では、そんなに重要度がなくなってきても
母乳は消化を助けるし、
何と言っても母子双方にとって、精神安定剤でした。
 
それから私は
子供の顔が、クルマの排気口近くにあるのがどうしてもイヤで
ベビーカーを使わないで、外出時はずっと抱っこしてたんです。3人とも。
 
7ヶ月くらいになると、さすがに重いので
子供が歩き出すまでは、乳房の奥や肩・背中が硬くなって、
先生も手技でほぐすのが大変そうでした。
 
母乳を終える時は、子供主体で決めました。
そうすると3人みんな、3歳頃まで。
 
次男が飲んでるそばで、
長男が「オレ、3さいまでのんでた。」と言うから
下の子たちも3歳まで飲まないといけないのかと
思ったかもしれないんですけどね。
 
長男の時に、一度「世間の常識」に惑わされて
1歳半くらいで止めようとした時が。
 
そしたら、授乳をやめた代わりに水分も一切受け付けなくなった、長男。
39度の高熱が出て、断乳は中止に。
 
「お母さんが、迷って覚悟ができてないと、子供に伝わってうまくいかないよ。」と、先生が教えてくれました。
 
あの時はやっぱり、自分でも納得してたつもりで納得できてなかったんです。
 
 
そして
まるでマイ水筒のように、当然のように母乳を飲んでた長男も
お乳にさよならをする時が来て。
 
桶谷式では、気候が良くて
母子の調子のいい時期に、お乳の調子のいい状態で
おっぱいにさよならをすると、もう一切あげません。
 
両親が日本語と英語で話すからか
長男は、よその子と比べると言葉数が少なかったのですが
 
母乳をあげる最後の日の夜、
「明日はもう、おっぱいバイバイだよ。最後だからいっぱい飲んでね。」と言うと
 
「おっぱい、おいしかった。ありがとう。」
言ってくれました。
 
さんざん母乳トラブルもあって、痛くてつらい時も何度もあったけど
ものすごい、泣きました。
 
しんどいこともあったけど、続けてよかったと
心からそう思いました。
 
あれは誰がどんなことを言おうが、反対しようが
私の生きてきたなかで、かけがえのない勲章。
 
まずい母乳は決して飲まなかったこの子が、私を母にしてくれたなあって。
 
 
そのおかげで、トラブルがなかったわけじゃないけど
2人目3人目の授乳は、精神的に楽でした。
 
でも、一番大変だった乳腺炎は、次男の時で
夫が健康診断で大腸の再検査を告げられた時でした。
夫、ベジタリアンなのに。
 
ポリープがあるかもしれないから、内視鏡検査しましょうと。
「ガンかもしれないから」
「ガンだと困るから」
どっちを言われたのか忘れたけど、
「ガン」と言う言葉を聞いて夫はパニックに。
夫を安心させようと、検査させるためにガンっていうのよという
私の母の言葉も、夫には届かず。心配は増すばかり。
その心配が私もストレスになって、ひどい乳腺炎になってしまいました。
本当に大変でした。
 
それなのに夫の方は、ポリープではなく、メロンの種でした!
メロンの種まで食べなくていいのに!
 
 
2度流産した後も、桶谷式の先生は一緒に泣きながら
次の授乳に支障ないように、手技してくれました。
 
子育て前半を日本でしたいと、私が切望したのは
文化や祖父母のそばで、という理由のほかに
 
日本で、桶谷式で
後しぼりまでしっかり手当してほしいという願いからで
夫も大賛成でした。
 
そして先生に「しこりもないよ。大丈夫!」とお墨付きをもらって
すぐに、日本を発ったのでした。
 
***
 
そこまでなんでこだわったかというと。
 
ある日の、静かな相談室で。
3時半過ぎてたので、他のママと赤ちゃんたちは帰っていたので
母子はうちだけでした。
 
そこに1人の女性が、助産師さんに脇を抱えられて入ってきました。
 
その方は、50代くらいで
ここではあまり見かけない年齢層なのでどうしたんだろう?思っていると。
 
女性は以前、でたらめに断乳して、その後の手当てもまったくしなかったそう。
でも更年期になって、背中に鉄板が入ったように重くだるくて
病院をあちこち回ったけども、生活に支障が出るほどになったので
手技を受けに来た、ということでした。
 
その女性の立ってもいられない、苦しそうな姿が
私が子供の頃、母が子宮筋腫とチョコレート嚢腫で
長年苦しんで寝込んでいた姿に重なって。
(だから子供の頃から、家事半分は私がしていました)
 
母の時代は粉ミルク全盛で、母は母乳をあげられなかったし
病気の強い痛みで、子供の成長を覚えていられないほどだった、母がとても気の毒で。
 
その女性や母が、身をもって教えてくれたから
女性として自分の体にできることは、精一杯やりたかった。
 
***
 
でも、私がこうしてきたからといって
他のママさんに「母乳で育てるべき」とか
「粉ミルクで育てるべき」とは、思いません。
完全母乳であるべき、とか。
 
もちろん出産後すぐとか
赤ちゃんにとって母乳が大切な時期がありますが
 
それが過ぎたら後は、
お母さんと赤ちゃんが、納得しているやり方が一番いいんじゃないかな。
人それぞれ。
生きている環境が違うのだし。
 
ママの意思に反して、夫や家族が反対意見の場合も多いですよね。
だから、私の強い意志を止めないで尊重してくれた夫には
心から感謝しています。
 
子供たちが大きくなって、ここニュージーランドでも
みんな学校で表彰されるくらいに温厚に育ってくれたのは
あの9年間があったからこそ、と夫は信じています。
 
周りがとやかく言うことじゃなくて
いろいろ悩み揺れ動くことがあっても
 
ママさん自身が納得いく選択。
赤ちゃんにとっても、無理がない選択。
 
ママ自身が子の思いも考えて、主体性をもって決めること。
 
 
でも今、ママさんがもし
「吸いついてくれない」
「足りているかわからない」
「出過ぎて困る」
「すっきりしない」とかで
1人で悶々と母乳育児に悩んでるんだったら。
 
授乳って体と心全体が大事だから
スポーツ選手にトレーナーがいるように、専門家に気軽に相談するといいですよ。
1人で、悩まないでね。
 
「痛みや腫れがある」 場合は、ひどくなる前に
ただちに連絡して、手当てしてもらってください。
 
 
桶谷式以外の助産師さんにも、マッサージしてもらったことありますが
私には桶谷式が一番痛くなかったし合ってたので、おすすめです。
 
こう40代半ばになって、振り返ると
ありがたいことに、人生の中で大事な場面には
よく、とてつもなく強力な助っ人に助けてもらっていて
 
まぎれもなく、桶谷式のY先生とK先生は
母乳育児の時期を、宝物にしてくれました。
悔いのないよう生きたい私に、力を貸してくださった恩人です。
 
感謝してもしきれないです。
 
母乳であってもなくても
もっと、おおらかな子育てができますように。
 
願い、そして行動しましょう。