Bittersweet in NZ

こんにちは、ウトです。家族とNZで暮らしています。移住して10年近くは、多くの怒りやフラストレーションを感じていましたが、おかげで行動・経験・学びができて、最近はおだやかな日々がとても増えています。いろんな変化の流れが強いので、大切なのは何か?ということにも向き合っていたい。ここには、体験や感じたことを言葉にしておきたくなった時に綴っています。 Thanks for being here.

息子とAPD9。遠隔マイク補聴器 (RMHA)までの道のり・2

次男の高校で、
遠隔マイク補聴器 (RMHA)トレーニングについての
ミーティング当日。
 
待合室で、教育アドバイザーのJさんと合流して、打ち合わせ。
 
そこへ、授業を終えたばかりの
統計学の先生と次男が一緒にやってきました。
 
 
初めまして、とあいさつをすると
「僕、あなたのこと覚えていますよ。2年前にも彼に教えたんですよ。」
 
あらら、ごめんなさい。すっかり覚えていなかったのだけど
今回の遠隔マイク補聴器プログラムを楽しみにしてくれていたそうで
 
Jさんの心配をよそに
とてもいい感じで、ミーティングルームへ移動しました。
 
モーニングティーの中休みを使って。
 
そこには、次の授業の実験準備で来られなかった先生を除いて
5教科のうち、4教科の先生と学年主任が集まりました。
 
 

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このマイクを先生の首にかけてもらいます。 
 
 
Jさんが開口一番、
このAPDの改善に、次男がいかに前向きで
それがこのプログラムの成功にどれほど有効かを、熱く語り始めました。
 
「本人と家族がこれほど熱心で協力的なケースは、めったにあるものではないので
経験上、良い成果が得られるものと期待しています。」と。
 
 
そして、補聴器の使い方の説明に。
 
と言ってもマイクのコントロールは、次男がやるので
先生は、首から遠隔マイクを下げるだけ(^^)
 
以前使ったことのある先生も、今回のマイクは
アメリカズカップに出るNZヨットチームが使うのと
同じ会社が作る最新のものなので
 
ワクワクしながら、補聴器をつけた息子とテストしてました。
 
 
そしてクラスの他の生徒には、どう説明するかと言う話題に。
 
これまでは、他の生徒には隠してほしいとか
話しても最小限に、と
中高生だと人の目を気にする子の方が多かったそうなのです。
 
次男は
「自分は全然恥ずかしくも隠すこともないので、先生達が話したければ話してください。ぼくは全然構いません。」
と言いました。
 
 
そして私も、続けてこんなようなことを話しました。
 
「息子がこう言うように、なぜ先生がマイクをつけて授業をしなければいけないのか、見た目には他の生徒達にはわからないので、息子の症状も含めてクラスで説明してあげてください。NZで第一のAPD専門機関であるSoundSkillsでは、APD患者は20人に1人ということですが、アメリカでは5〜10に1人と言われています。私は隠れAPDの子がまだまだいるように思います。息子は高校の1年目から、中耳炎で耳がよく聞こえないまま、今、最終学年を迎えました。難聴がAPDと診断されるまで3年半かかりました。息子にも話したのですが、堂々と補聴器をつけて自信を持って勉強することは息子自身のためではあるけれど、同時に周りにAPDという障害を知ってもらう、いい機会なのです。もしかしたら自分もAPDかもしれないと気づいてもらう、障害があっても周りに助けてもらうことは全然恥ずかしいことじゃないということを、なるべく多くの人に伝えてほしいのです。このプログラムは息子の脳トレーニングのためですが、先生方には、絶好の教育的チャンスととらえていただきたいと思います。この一年間、どうぞ協力をお願いします。」
 
 
すると「もちろん僕達、生徒のためになることは大賛成ですよ!」と
隣に座る統計学の先生が、笑顔で答えてくれました。
 
「人と違うことをするなら、堂々と自信を持ってやりなさい、と教えているんです。」と私が言うと
「そういえばずっとヘアスタイルも目立ってたよね。」と別の先生。
 
次男にはこだわりのヘアスタイルがあって(校則違反ではない)、
目立っていた数年の間、学校や道で人になんと言われようとも続けていました。
 
母からは堂々とやれ、と言われ続けていたんですから、
人と違うくらい、本人はどうってことないのです。
 
とにかく先生達は、生徒の繊細な気持ちを気遣わないで
オープンに遠隔マイクを使えることに、とても安心していました。
 
それは先生が、授業に集中できるということです。
 
先生達には、マイクをつけて1年間ずっと授業をお願いするのです。
その上に息子の気持ちをおもんばかってもらうことまでは、避けたかったんです。
 
できるなら楽しんでいい経験にしてほしい、という気持ちは伝わったようで
 
こんな高くて最新のツール、生徒達も興味津々だと思うわ、と
いつから使うの?じゃ次のクラスから使えば?このままつけっぱなしでいいよね?と
 
ワクワクの先生達のおかげで、このまま即日開始になりました。
 
先生一人ひとりにお礼を言うと
授業開始のベルが鳴ったので、ミーティングはお開き。
 

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ほら、そんなに目立たないでしょ?
 
 
帰りに駐車場でJさんと、学校がものすごく協力的でよかったね〜と
喜びを分かち合いました。
 
「これも彼が、清々しいほどに前向きだからよ。
こんなに関係者全体が一丸になることってなかなかないの。」とホッとして笑顔に。
 
「学校としても、こういう障害へのサポート体制が万全であることを示したいだろうし、成功例を出せば、医療機関と学校の協力体制も将来的に取りやすくなるでしょう?せっかくの息子のケースを、ぜひ将来の生徒のために使ってほしいの。」という
私の言葉に、Jさんもうなづいていました。
 
そう。初めてのケースだから「成功した前例」を作って
後から来る子やその家族が歩きやすいように、
学校と専門機関が協力しやすいように、道を作れたらいいなあって。
 
 
以来、毎日の授業では
どの先生も遠隔マイクをスムーズに使えていて
 
次男の方も
これまでは理解するために、聴くことに一心に集中していたのが
 楽に聴こえるので、疲れが減ったそうです。
 
APDの子は、学校では聴くことに人一倍集中しなければならないので
学校が終わると
 
普通の子の倍に脳が疲れて、学校から帰るとグッタリしてしまうのだそう。
 
 
ミーティングに来れなかった先生も
 
「オレ、ダサいけど、これ(遠隔マイク)つけると、一応サマになるだろ?」って
喜んでるつけてくれてるらしいです。
 
古典の女性の先生は、声が大きくて早口で、よくしゃべるので
補聴器で耳にうるさすぎないか気になってましたが、大丈夫とのこと。
 
教室の中で、授業内容を理解するためには
先生の話す声と周りの雑音の差が、通常は5デシベルだそうですが
APDの生徒には20デシベルの差が必要です。
 
この遠隔マイク補聴器では、
その「20デシベルの差」で聴くことができます。
 
 
APDに人には音がどう聴こえているか?
 
英語だけど、シミュレーションがあります。47秒から。
 
 
 
聞いてみると、
 
息子よ、勉強よくここまでなんとかやって来れたなあ、と感心します。