Bittersweet in NZ

こんにちは、ウトです。家族とNZで暮らしています。移住して10年近くは、多くの怒りやフラストレーションを感じていましたが、おかげで行動・経験・学びができて、最近はおだやかな日々がとても増えています。いろんな変化の流れが強いので、大切なのは何か?ということにも向き合っていたい。ここには、体験や感じたことを言葉にしておきたくなった時に綴っています。 Thanks for being here.

ニュージーランドの、プリズム

 
 
2019年、3月15日。
 
曇りの予報だったのに、その日の太陽はとても強かった。
 
平日の学校をストライキして、集まる大勢の子供達。
学生、賛同する大人達で、Aotea Square広場には入りきらないほどの
熱気があふれていた。
 
「自分たちの声は、世の中に影響を与えないから、大人達に聞いてもらえない。」
という
 
心無い大人に、反旗を翻して、若い世代が集まった。
 

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アオテア・スクエアまでのバスは、停留所に止まるたびに
わんさか参加者を乗せていく。
 
一般のバスが、学校ストライキのバスツアーのように賑わっていた。
 
後ろの席の女の子達が、学校で地球温暖化を教えるのに
当の学校や大人達が反対することに、とめどなく不満をこぼしていた。
 
今回の子供達の行動を支援する大人である私達は、
子供達が声を届けようとすることが、どれほど素晴らしいことかを
しっかりと、刻み込むように伝える。
 
若い世代は、無駄を無視して、鋭く核心をついてくる。
 
その声を、止めるな。
 

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オークランド中心部に集う
小さな子供から、皺深く刻まれた大人まで幅広い群衆に容赦なく
ジリジリと照り続ける日差しが、大人達には堪える。
それでも若い世代は、
次々と地球のこれからと行動の必要性を、声高く訴えた。
 
ステージには、政権閣僚二人の姿も見えた。
子供達の今回の行動に感銘を受けたという
Green党の共同リーダー、Marama Davidsonマラマ・デヴィッドソン
若者の熱い思いに応えた。
 
地球温暖化対策には、大人だけではなく子供達の力が絶対に必要で
これからも声をあげて活動を続けていくよう伝えていた。
 
 
あれだけの暑さの中でも、見知らぬ同士がお互いいたわりながら
声を張り上げて、掛け声を掛け合って、想いを一つにしていた。
 
付き添いで、のぼせそうになりながら群衆の中で一体となったり、
あちこちで見られる「思いやり」は、暑苦しさに反してとても心地よかった。
 
ストライキが終わり
群衆がまばらになり、お互いの勇気と行動を讃えながら
ほうぼうに散らばっていく。
 

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熱気が落ち着いてきた頃に
隣で私と同じメッセージボードが気に入って、見ていた人が。
 
Green党リーダーの、マラマ・デヴィッドソン。
 
娘と夫と一緒に、このストライキに参加した私は
子供達の声をしっかりと閣僚として受け止めてくれて、
親として心から感謝しています、と伝えました。
 
閣僚として、水・住宅・子供
・マオリ パシフィカ エスニックコミュニティーなどのスポークスマンである彼女は
家庭では6人の子の母親でもあるので、
子供達の今回の活動を無視することはとてもできない、と言っていました。
 
マオリで、人権や虐待問題に長年取り組んできた
Green党リーダーのマラマと
 
日本人移民で、NZ Labour党の多文化メンバーで
ノースショア支部の立ち上げメンバーでもある、ただの普通の母親の私。
 
立場が違っても、手を取り合って
「社会や環境をより良くしたいという思い」は、同じ。
 
環境や教育のことなどを率直に話し
 
それから前日、暴行を受けた
同Green党の共同リーダーで、気候変動大臣のJames Shawジェームス・ショウへ
回復を願う私の気持ちも、伝えてもらうことに。
 
「暴力で訴えることが、許されるべきではない」
と、お互いうなづき合った。
 
この日、3月15日。
 
この時、クライストチャーチで
多くの人が銃の犠牲になっていたことは
まだ、私は知らなかった。
 

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とても親しみやすいGreen党共同リーダーの、マラマ・デヴィッドソン。
 
3月15日。
 
この日、私達の暮らすニュージーランドでは
 
子供たちによる最高な行動と
 
卑怯者による最悪な行動が、同じ日に起きた。
 
***
 
クライストチャーチにある
イスラム教徒のモスクで起きた銃乱射事件で、50人もの命が断たれた。
 
負傷した人も多く、精神的被害も含めるとその影響は膨大。
 
この白人至上主義者の銃乱射事件で、この国全体も海外もショックを受けている。
 
夫が生まれ育ったイギリス・ロンドンを始め
世界の各地で、人種差別やイスラム嫌悪に反対するデモが起きている。
 
過激化した白人至上主義者の犯行だだけど
この地をよく知る息子や現地の人によると、
こんな事件が起きるような場所ではないそう。
表向きには。
 
世界中にある白人至上主義、〇〇人優越主義は
治安が比較的よく寛容だと言われる、ここニュージーランドにも
見えないようで存在する。
表面的に安全そうに見えるだけで。
 
極右まではいかなくても、現実に白人優越〇〇人優越はあちこちで潜んでいる。
 
それは移民だったら、多くの人が知っているはず。
 
安全そうに寛容そうに見えるけど
角度を変えると、移民や難民への嫌悪、差別感情が
移民が増えたことで
この社会にも存在することが、ハッキリと分かる。
 
オーストラリアだったらもっとはっきりぶつけられるであろう
人種差別行為は
移民だったら、NZにいても仕事先や生活していて
誰でも受けたことあるんじゃないだろうか?
差別感情をぶつけられたことはない移民が、いるだろうか?
 
教師の夫が、移民のクラスを教える時
人種差別にあったことはあるか、聞いてみると
学生はほとんど全員が、手を上げる。
 
NZのイスラム教は、1%ほどらしいが
白人の夫の教える学生には、イスラム教徒も大勢いる。
 
これからは、夫は教育者として
学生の恐れと悲しみを分かち合って
この卑怯で屈折した憎しみに屈しないことを
繰り返し励まし、支えあいながらの授業になることでしょう。
 
その夫が守っていく強さを保って、学生を育てていくために
私は彼を支え続けていくことでしょう。
 
ここまで極端じゃなくても、沸々と潜む
移民や難民への嫌悪は、この安全そうなこの国にも確実にある。
 
もう、この現実を無視してはいけない。
 
見ないふりを続けていたから
屈折した嫌悪が、よりによって
集って祈っていたイスラム教の人々に、向かってしまった。
銃という卑怯な手段で。
 
この事件で、浮き彫りになった
移民や難民への嫌悪は、イスラム教徒に対してだけではないことを
私達移民も受け入れなければならないと、私は思う。
 
 
環境科学者が訴えた
 
「現状を誰かが変えてくれるのを待つのではなく、自分達でも変えなければいけない。」という言葉。
 
「世の中を変えていくための行動を、勇気を持って続けていくことの大切さ」
子供達に訴えた、
 
Green党リーダーの、マラマ・デヴィッドソン。
 
地球温暖化に向けられた言葉は
 
奇しくも同じ日に起きた銃乱射事件で浮き彫りになった
移民や難民への嫌悪に対する、大人の移民である私達にも当てはまる。
 
「現状を誰かが変えてくれるのを待つのではなく、自分達でも変えなければいけない。」
「世の中を変えていくための行動を、勇気を持って続けていくことの大切さ」
 
 
子供達は心無い学校や政治家に脅され否定されても、勇気を出して行動に出た。
 
私達の娘がその一人であることに、心から誇りに思う。
 
私達大人は、どうか?
 
 
私は、移民や難民への嫌悪を少しでも減らすために
普通の一母親ではあるけれど
 
現実にある、移民や難民への嫌悪を少しでも減らすために。
 
もし何かできることをしたいという人は
安全な社会環境のために発言し、活動する移民グループに参加することを
考えてみてください。
 
それ以外の方法がいいという人でも、自分で何かできる行動をし続けてください。
 
何もしなければ、またどこかで犠牲者が出ます。
 
命は落とさなくても、精神的・生活に悪影響を与える差別は続きます。
 
子供達が行動しているのに
大人が、のほほんと見て見ぬ振りで何もしないのは、本当にやめてほしい。
 
過去には、摩擦を避けて目立たなくしていれば
それで移住生活が送っていけた時代があっただろうけど
 
もうそれでは、安全に暮らしていけるとはいえない時代になっていることを
このオーストラリア人の差別主義者は、わざわざニュージーランドに来て知らしめた。
 
移民に参政権がある数少ない国、ニュージーランドで
安全な社会創りに参加できるのに
 
大の大人が何もしないのは、本当にやめてほしい。
 
でないと、またどこかで誰かが犠牲になる。
 
その犠牲が、この私じゃないと、誰が言い切れますか?